天使/道草次郎
「来年のためになにを蓄えればいいのか、それをあなたはもう知っているはずだ。小麦を蓄えればいいのだ。何万年か前、誰かが水道をひねって出てきたのが小麦だ。驚くべき便利さは大多数の人間をダメにする。神様はけれどもそれを実行された。むろん狩猟採集社会とて、どんぐりから栗鼠を或いは栗鼠からどんぐりから奪ったことには変わりがないのだが。」
個人C
「ぼくはもう本当に生きるだけでいい。ただ仕事をしてお金を稼ぎ、たまにちょっとだけ贅沢をしたりして、ささやかな生活をしていければそれでいい。でもその大変さは嫌というほど知っている。」
使いD
「すでに成層圏だ。本当に生きるだけでじゅうぶんな種族となってくれた。狩猟をしなくなった流れ星が一昨日の洞窟からながれてきて、農耕を発明したのは意外だった。大多数の猿にとってそれは遥かな天体現象だったから。分業や貨幣はオランウータンの領分だったのにちょっとした手違いがあったようだ。たまにちょっとだけ贅沢をしたい、これは本音だろう。天使の落とした定期券、これは今後、現実としようか。ネクスト・サイクルでまた。交信終了。」
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