出帆/道草次郎
おってやって来る
丸眼鏡の五月雨めいたさびしさは
意識をもった銅硫黄の石となる
この消し炭のような孤独が
おれとおれの生活の伽藍堂に砕けちり
神経質な工場群を形成するならば
空無はいちめんに満ち霞んだ沙霧を拵えるだろう
清楚と風とが幼女の脾臓で
たとえば破滅と昵懇となるならば
なるほど凡ては
たしかに虚無の相似系であるに相違ない
すくなくとも
シンフォニカルな経験の
そのいたって均質な焔を揺らめきのうちにだけ
この明滅と光明とはくりひろげられる
やがては一個の敬虔な馬が
宇宙一面に巨きな苦瓜の花を咲かすこともあるだろう
(こんなうららかな午後はみんな
つぎの世界へと恃むため
戸隠神社のむかしから聖ら
かと云われているあの巨杉
の奥社に液体となってい
ってしまった)
たしかにそうなのだ
おれたちはけわしく本当になろう
もうじき明ける夜のかがやく方角へ
おれたちの暗い水を
そのあと先をしらずに真青に流そう
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