信じられないこと/道草次郎
 
信じられないことがある
それは一つの、収束


帰ってきて皿を洗って、シャワーを浴びる。それからごみ捨てをして(妻にはいつもシャワー前にごみ捨てをしろといわれたが、どうにも守れない)、雑用をこなしさてやっと寝れるという時、ほんの15分ほど自分の時間がある。気晴らしのYouTubeを眺める時間。ごく偶には、読書の時間(3年間で唯一読んだのはヘルマン・ヘッセ『シッダールタ』の最終章「ゴーヴィンダ」)。


そんな生活が静かに、小雪のように降り積もっていった。朝、カーテンを開け放つと、そこにはかつてつややかだった何かが立っていた。顔。

詩の在り処、芸術の方法論、青土社、思潮社、
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