文章/道草次郎
 
親しみを覚えるのはノリに乗った文章ではない。

ところどころ覚束無い感じの消しゴムで消した跡が今にも見えてきそうな文章がいい。

ためらいがちで、口下手で、それでいて丹念な性格が見て取れるような文章がいい。

細部や物の姿形を精確に描こうとする意思と、それでも言葉にできず取り落としてしまった何かに憧れているそんな文章がいい。

遠慮がちな秘密やありきたりの日常生活、素麺を食べるお猪口や精密時計のゼンマイのような控えめさを湛えた文章もいい。

職人の節くれだつ指と微笑むと光る金歯が、彼の生活の中に同居するような文章がいい。

それから、相手の事をよく考えた文章がいい。


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