朔夜/あらい
 
「けれどね。」
君はひたすら早熟の無花果を皿に並べているだけで、こちらには目もくれやしない。無論食べる気も無いのだ。
同罪なのだ、なら悪い子だ、ねえ。私達の思いは重なることもなく、ただ庇オオわれている、誰もいない牢獄に、君に囚われて、ただ、青臭い開花に広がる宇宙を愛していた、これも自然の冥利だろう。
ピン留めされたルリタテハは今でもひうひうと息を吸っては吐いて、新しい酸素が産まれる前に生を殺している。何度でも繰り返される延命装置に救いを与えては神と玩んでいるらしい。
それはメトロノームみたいな喘鳴のコトゴトと煮込まれたトマトシチュー。君の好物だったもので更生された君自身に、至れり 尽くせり
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