罪状(自由律俳句)/直治
 
立てかけたギターが倒れかける夏
しずかな映画のしずけさを引き摺る
いつしか終わっていた曲と雨ふる
きつい煙草をあげた夏の畔
死にぞこないの春だ
ちぎれた雲がふいとさみしい
こんな小さな破片に傷つけられてもう夏だ
無精髭撫でてやる午後の陽光
仏滅の日の髭づら死んだ目をする
雲を焦がして咲こうとする夕映
濡れた破片が光っている 
雨がぽつぽつ私の罪状
朝がまるで幸福みたいな顔をしやがる
吐いた窓辺に雨がつめたい
ふりむくとかなしみばかりある朝光る
鈍い速度で街の灯火を眺めている
となりの花壇も眠っている
街も口つぐんでどうしようもない
陽も焼け落ちて傷ほかす場所もな
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