エリオット「伝統と個人の才能」/藤原 実
 
とえわずかでも変えられなければならないのである」
                                (「伝統と個人の才能」)


エリオットが伝統を並べかえてみせる手際はひとを幻惑させるようなところがある。というのはかれは一方で他人の説をじぶんの方法として取り入れつつ、一方では当の相手を切り捨てたりする。このこともかれの「伝統主義」のあらわれなのだろうが、それよりも「成熟した詩人は盗む」といったいいまわしの方がかれの本音に近いようで、なまなましい。

その手際はなにか手品のようで、タネが隠されているという感じを与える。また、捨てられた札(ペイターのように)の側に立てば文
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