炎/道草次郎
 
ただ一つの言葉を言えないばかりに
君は長い長い詩を書く
ただ一つの言葉
それを君は覚えているかい?
君は君が詩を書く動機を
まだ覚えているかい?
君は詩を書くことで
気を紛らわす苦しみから目をそらす
君はまだ幼いから
詩を書くことを自分に許せない
詩の豊穣な世界に
生きることの
謎めいた
かなしみや壮絶や歓びを
認めようとしない
君は
君が言えなかったことを
言いたいだけだと
それを言ってしまったら
ランボーになるんだと
そんなふうな
青さを捨てられない
君は覚えているかい?
君があの人や
他の色々な人に言えなかったことを
君は
いつになったら
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