と/竜門勇気
 
から少し無能な人間よりは酷使されていた
悪いやつで、少し有能な奴らよりずっと酷使されていた
彼はそれが不思議なことに不本意だったらしい
「あいつらは、人間ぶっ壊す実験でもしてんのか?」
多分、そうだと思う

彼はいいやつだった
糞の積まれた棚に手をおいてぼくの方を見た
じゃなきゃそんなことしないだろ
ぼくはやつの中身は違うもんになってたことが
そんときわかってた

ぼくは無能で少し悪いやつだ
目があって 床のゴミクズに視線をやった
とてつもなく、ゆっくり
自分ではそのつもりだった
そのそばにいた人がぼくは逃げるように下を向いたと言った
なにか 自分のことで確信する
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