沈まぬこころ/万願寺
朝の陽の果ての君を想うこと。わらわれても泣かれてもきみはきみの真実を世界につき刺してやろうといつも健闘していた。たのしいね、とか、よかったね、とか、そんな貝がらを耳にあてればひびいてくるような漣のことばはきみを通過することは特になかった。ああ大好きさ。そうさ。大嫌いさ。知ってたよ。冷徹な表情も諦観の声音も、演じてたってほどではなくても、きみはそうする義務をかんじていた。そうだろ?
花束を持って向かいます。墓石に語りかけたくなったなら、海の向こうで叫んでください。私の耳の骨を、深海であんこうが照らすころ、国生みの神様たちと、もう一度懇願しに来てください。
戻る 編 削 Point(1)