ルート19号の幻想/道草次郎
たし、こんなにも速く投げられたソフトボールをどうしていいか分からず、捕球にすら凄くあたふたした。内心恐くて逃げ出したかったのをよく覚えている。でも彼が受話器をとって誰かと話しているのをこっそり見た時、その様子はまるで入社3年目のセールスマンといった風情だった。それがやけに印象に残っている。彼の事をもっと分かろうとしなかったのは、かなりの過ちだった気がする。
ぼくはもうすっかり歳を食ったわけではないけれど、若いというわけでもないので、隠し事をしてもあまり意味がないと思うな…
十五の時、ぼくはもちろん童貞で、ヒットソングが恋愛曲ばかりなのが不満で、顔見知りの同級生とすれ違う時は必
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