冒険/タオル
 

『これはそんじょそこらの百貨店には売ってない。』と、
いかにも百円な感じのスコップを持って断言する
大きなサングラスをかけた男の人が立っていて、
変わった人だなあと感想を抱いた。
この人どこかで会ったっけ、精神病院かなあと少々胡乱なことを思いつつ、
じっと見つめてたら、背後はファイルや書類らしきものの散乱したオフィスの廃墟で、
窓の向こうには蔦の絡まった給水塔が寡黙に佇んでいる。
夏のような気配、でも春のはじまりにも似た陽気で、あと数歩踏み出せばその光を浴びることができるけど、なんだかそうしないでその人の言葉をじっと聞いたままでいる。
『うちの百貨店にしか置いてない。』と、

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