感受性倦怠期の客船/あらい
 
絵本でなきゃ生き続けられない、
隅に侵され売れ残りの水蜜桃はもはや腐っていて
そんな誰の記憶にも残らない人生で結ばれたい
綺麗なおべべで飾り立てる、十二戒の雛飾りの上段に、
嘘でもいいから
私とあなたを薬包に仕立て、らくにあげたいのです。

格子に治まる長月。
落書きされたガラクタの子供達に告げ口する、
青い鳥の骸が解けて流れた先に
夏の名残のまま種を残した花火が身も心も残腹に破裂した。
二重露光の虹彩とモノクロの吐瀉を焼き増しする、
未来を育むことのなかった愛しいものたちの、花暦のかたち。
埋め尽くす涙と五月雨から飛来する灰のような雪に
トチ狂った無限大の軌跡を抱いていた、あれは赤子の、渡し。

感受性倦怠期の客船に乗り込んで、今にも沈みそうな。
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