鉛丹/あらい
 
何のしたたりか盥タライにも漏らさないほどの焦燥ばかり
乾いたうねりを空回りさせるもの。そのくらい遠いだけの道のりが、
私に釘を打ち、大嵐とも想われる風雪の渦すらやっかみをなすりつける
無用の遺品があります。
 
例えばどこに行くのかわからぬまま、ぼんやりとふらふらり。
雨垂れが肌を滑り好く くゆりまして、しまわれました、春の祝い
朱色の盃をこっそり持ち出しては酌み交わしたとき。
 
訝しげな表情で、みくだしては てをひきまして
勝手 噎せこんだのは、何方がはじまりでしたでしょうか
 
宵に奔られる鬼灯を頼りに、この一等客船は死にゆくことだけは
知っていてもこれはいずこへも
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