虚脱/あらい
ただ、離れ離れになったともしらず、花の褥で鳴いている雛鳥の旅立ちは、そっと心をくすぐるものです。
あらかた歌い尽くした祀りの跡で、ぐらり 骸に還る、騙し舟の残夢 とでも申しましょうか。浮いたままの天涯が織り成す五色の御簾の残り香でもあります。
しかしやはりここにも蓮の腹から日出ものありて。逃れることは叶わぬよう、そっと白鷺の細羽根で稜線を祓い、糖蜜の含み 頬の桜がたどたどしく、はらはらと、旨に積もる。
毀れ眦を粘着する光に縫い止められ、簡単に風に運ばれていくものすら形を留めません。全て侵されて腐りゆく若奥様の歳月すら、楽な塩梅の水平環がテラスだけ 照らすだけ。
追いかけること
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