砂上の罪跡/あらい
 
何故であろうか。私は居場所を得ているのだ、囲われているという、これが現実であろうが無我であろうが、私は私を擁けそうにない。
 ただ零れた盃だけが全てを知っているとも。

 中に潜むは満月の微笑み、飲み乾されたものはついぞ生き続ける餓鬼に戻る。
 繰り返される愚考に効力は持たず、膨張と摩擦の介錯が繰り返され、らくだけをしらしめる。
 ひたりおかしてくれる、朝焼けを待ち望む、今日も雨の傍らに滑り落ちる褥に長るる身を堪える。
 私はただひとりであり、統べてである。
 孤独なようで内に秘めるものが溢れては爛れている、繰り返し蝕まれては息を吹き返す、電飾に犯された砂上の楼閣にて。

 毎夜拡がり続ける歪《ひず》んだ海図を知っているか、
 あれだけが天を覆いつくすときを私たちは待ち焦がれてならない。
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