Was us/mizunomadoka
「私もかつては人間でした」
ロボットはラピスラズリを
キャンディ紙に包み
両端をクルクルと回す
「さあどうぞ」
彼女はそれを受け取って
代わりに写真を渡す
「火星の渓谷ですか?」
「グランドキャニオンよ。新婚旅行の」
「私もかつては地球に住んでいました」
ロボットはアメジストを
キャンディ紙に包み
両端をクルクルと回す
「さあどうぞ」
「もう写真がないわ」
「では月末払いにしておきましょう」
「ありがとう」
彼女は表情ディスプレイを点滅させて
アルバムと宝石を大切にバックパックに仕舞う
ロボットたちはコツンと触れ合い
互いに手を振る
「お元気で」
「お元気で」
彼女は店を出てまた同じ探索ルートに戻る
質屋ロボットは宝石箱を机の下に戻し
先ほどの写真を見つめる
今はもうない過去の地球で
二人がこちらに笑いかけてる
宇宙船の残骸で
彼女は包みを開いて宝石を取り出す
そっと星と見比べて点滅する
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