空の波紋(第二稿)/服部 剛
 
「ママ―、あれなーに?」

「?」の文字から、人生は始まる
母の手に引かれついていく
おどろきの潜(ひそ)む
アスファルトから、ビルの街並みを見上げれば
時々足がもつれ、石につまずく
半ズボンのひざを擦りむいて、泣く

小さな手で涙をこすり、立とうとする我が子に
手をさしのべる母のまなざし
仰いだ空の青さに――とけて
すっくと立った、幼い僕の頭上に
やさしい呪文がふってくる

「ちちんぷいぷい いたいのいたいの とんでいけ」

独りにはなりたくない、日々の縮図
あの日の母と子は一枚の風景画となり
今も 胸の奥で 呼吸をしている

もう二本足で歩くよう
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