インソムニア/直治
 
冴え渡る赤信号のしずけさ
誰もいない青さの中にたたずむ
くやしさ敷きつめて眠れぬ夜となる
さびしんぼうの月あかりがそよいでいる
子供じみた言い訳で日が暮れてくる
たばこ眠れぬ夜を灰にするひととき
溶け切った氷のそばでうつむく
なぐりがきの後悔とたばこが終わる
さみしい夜の空白埋めるすべない
もう忘れたいなにもかもが春のゆき
しずけさうちよせて耳が淋しい
進まない時計がひとつだけある
代わり映えないベランダをもどる
死にたい黄昏の葉をもいでいく
たばこひそひそ燃える風の音する
朝から父をどやしつける母と居る
しずけさつたって風がながれてくる
たばこのうまさ遠くへ飛ば
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