厨房に立つ(改題しました)/山人
 
ば、毒気だろう。さらっとしたほんのり甘いスーパーの野菜にはない毒気だ。そしてその毒気だが、適度に緩和された味区分があり、それをめざすのが山菜料理ということだと考える。山菜に限らず獣の肉でもそうだ。あまり人気のない野ウサギの肉など、火を通す前に周到な血抜きをしなければならないし、熊の肉は数時間煮込まないとうま味が出ない。これら、野生の食肉や野草はそれぞれ適性到達点があり、そこを上手に料理していく必要があると思っている。
 常連さんたちはあっという間に山菜を食べてくれ、蕎麦含め完食してくれた。こういう手間ばかりかかる儲からないお客さんは、あまり嬉しいものではないが、消えかけた炎に火を点けにやってきてくれるのだ。 
 
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