塒/あらい
 
 唯、傷は塞がっただけで 奥底に植え付けられた 過去たちがわざわざ 視界を滲ませ続ける。
 人の惨劇の 常緑の星を頂く 銀翼を奪われた雀蜂が、舞い上がる独り舞台の 空になった香瓶の細口に ひしと偲ばせるだけの為に この子の泪は膿を尾として 此処に愛しに集う密度だ。
 盗人たちの 住まいを弛撓シタタワせるなどと、運命とは酷い有様で 頭アタマはただの飾りの 羽化したてのお転婆でも 雨風に射ウたれ 丸裸の縁エニシを崩され 柔らかな身を摺り点ける 尚も他人同士で。
 弾力ある意識 ケチな書簡 縺れ合う銀河 相容れないもの。
 誰もが隠す祭壇の先には何が眠るのか 一刀突き立てた露骨な腕カイナには 潮
[次のページ]
戻る   Point(1)