風のテラス/草野大悟2
オリビアニュートンジョンの「そよ風のメロディ」が流れている。
初夏の涼やかさを邪魔しないほどよい音量で。
午前七時。ゆるやかに風が吹いている。
ほうれん草を混ぜ込んだポパイパンを齧り、苦めのコーヒーを啜りながら窓の外に目をやる。
窓は、全面ガラス張りだ。
直近に、ロココ風のこじゃれたテーブルセット三組がさりげなく置かれている。その先の手入れのいきとどいた広々とした庭園には、イロハモミジやサルスベリなどの樹木が、一見、雑然と植えられており、それぞれの葉が様々な色に揺れ輝いている。
庭園の中心に、高さ三十メートルはゆうに超えていると思われる明るい灰色をした鉄塔が聳(そび)
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)