花環/むぎのようこ
あたりは春
野にいちめんの花も散るのに
舞いおどっては降る
日射しのまにまに
わきあがる水の記憶
たおやかに鎮められた
あぶくが
とどまっている
硝子細工みたくしんとして
萌ゆる日もとおく
しずかなふゆの森で
わずかな明るさも雪が
掠めてはさらさらと埋もれる
ほどけることも
とおくになってやがて
口をつぐんだまま
眠りにつく
唇はあおく冴えて
陽に
融けてはながれだす
言葉の散った
世界ではここは羽音ひとつすら
顔をもっていて
雪花は何度もいのちをめぐらす、
継ぎ目のない環を
ながめているうちに
日は鞣され
たいらかなこころで震えている
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