気が付いたらボロ雑巾のようにベッドに転がされていた/山人
 
に命名したい。
 二十七日、早朝の検診に夜担当のA看護師がそれぞれの病床を回った。鼠径部の赤みが気になるという事で訴えたところ、マジックでその内出血部分に縁をなぞり、これ以上今後広がっていたらちょっと問題があるとのことだった。この日は退院日で一〇時と決められていた。わずか五日間だったが、いろいろと荷物があり時間はあっという間に過ぎた。
 感染防止につき、病室までの立ち入りは家族であっても禁止となっているため、妻はデイルームで待機していた。取りあえず主だった荷物を妻のところに持って行く際に、ナースセンターのカウンターでA看護師が俺を見つけ、チラ見で小さく手を振ってくれた。心残りなのは、私の表情が
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