田舎のラジオたち/ふじりゅう
 
た。旧式のラジオから流れていた時の声と、今流れている声はいつのまにか別人になっていた。流れてくる音楽も、男が旧式のラジオの時に聴いていた音楽とは趣味趣向が全く違ったものになっていた。最新式だったラジオより最新式だったラジオより最新式だったラジオを超える最新式のラジオから流れる音声にノイズが混じっていたので、これはいけないと思い、男はすぐに街まで出向いて最新式だったラジオより最新式だったラジオより最新式だったラジオを超えて最新式だったラジオを凌駕する最新式のラジオへ乗り換えた。が、もはやその時、ただでさえ狭い男の部屋は何年も動かしていないラジオの山で大変狭苦しくなっており、聴きなれないキャストの声にうんざりし、特段好きでもない音楽に辟易し、とっくに捨てた旧式のラジオを懐かしむだけの生活をしていた。それから、最新式だったラジオより最新式だったラジオより最新式だったラジオを超えて最新式だったラジオを凌駕する最新式だったラジオより著しく性能の劣る前時代的な旧式ラジオへ乗り換え、暴力行為を繰り返し、男は大変満足しているとのことだ。
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