白い炎/為平 澪
年末の庭に放置された大量の菊が
霜が降りる毎に人を誘う手をみせる
いつか燃やさなければ片付かないね、と
そればかり気にしていた母の、
指の第一関節はガンジキのように折れ曲がり
小さく縮んだ菊の亡骸を集めていた
仏壇の裏のセイタカアワダチソウが
鈍色の曇り空にトゲトゲしく突き刺さり
誰かの長い白髪のような枯草は
横倒しに倒れたまま土を覆い隠している
簡単に抜ける
色褪せたそれらのものを集めて鎌で束ねては
焼き場まで持っていく
母はその薄暗いものたちを上手に重ね合わせ
端が折れて黄ばんだ新聞紙を細長く丸めると
マッチを擦る
底に火を置かれたものたちが燻る
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