真珠貝の甘さに/非在の虹
真珠貝の甘さに
開かれた窓の憂愁に
悶える扉の上の紋章に
眠る珊瑚虫のように目覚めることなく、
ひとり泡立つ水辺へと水辺へと
舌先を伸ばし裏返る響きの高所から
堕ち続ける連弾の
眠りを眠り続け
幽かな光を恒星から受け取る夜空の
形状を模した天蓋から送り続ける。
誰の物でもなく
誰のためでもなく
濡れた秋の葉の葉脈までもひとときの憩いに
紛れた相貌をあらわな自尊心に
何らあらがうものでもなく
ただただ安らう。
ただただただと
ただただただと
ただに(銃の音は遠い)
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