ジャズマンとの対話/服部 剛
在りし日の
オスカー・ピーターソンの指は
鍵盤の上を無心に踊り
宙に奏でる音符の流れで、僕に云う
(生きるって、悪くないよ
時には素敵なこともある)
「この世に、虹はあるのかなぁ」
(あるさ、何処にだって隠れているよ)
「本当かい?」
(?無?になってごらん
僕が今、こうしてピアノを弾くように)
(君が?無?になれることは何だい?
それを見つけて、やってごらん
そのうち虹が視えるから)
やがて音楽は静まり
レコード盤の針は、浮く
僕の中にあるドアが
そっと開いた
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