杳香/
ナンモナイデス
深く森の闇の香りがします
行き過ぎてゆく人に言葉をかけたりします
つまらない世間話ですけれども
視線はいつも痛いものです
いくどもえぐられているような不安定な
でもそれが欺かれていたとしても
時折花よりはましだともおもいますけれど
小さく
可憐な花にほど
他者の指先は痛いものですから
なすすべも知らず
はかなく積まれ逝く
ものたちには
その残り香さえも解き放つことも
ゆるされない
ものなのでしょうか
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