冬を歩く幻想/帆場蔵人
 
庭の木も街路樹もすっかり
葉が落ちさり手をひろげて
雪を待ちかねてざわざわと

さぁ、おいで、雪よ、おいで
歌いながら風を掬い夜を掬い
全身で冬の夜空を受け止めて

君は僕の手をひいてその木立ちを縫っていく
僕は君の手にひかれ、木立ちの歌を聴いてる
雪が降るまでにどこまでいけるだろう

雪が待ち遠しいと思いながらも
朽ちかけた落ち葉を拾いあげて
繋いだ手の間に縫いこんでいく

ひとつの季節の幻想がひとつになれない
肌膚の間で編まれ街路樹を縫い続けていく
雪が降るまでにどこまでいけるだろう

ぽつりぽつり、と
浮き上がる街灯が
幻想を打ち消してしまう
工事現場の誘導員が
僕らを日常へと誘っていく、夜の街角
マンホールの蓋がズレている

あそこには辿り着けないんだ
街灯のなかを当たり前に歩いて
ほら、雪が降り始めた

コンビニで缶コーヒーを分け合いながら
僕らはどこまでもいけはしなかった

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