Resemble/草野春心
話は長くなる
いくつか 電灯が浮きはじめる
夜 ためらいと苛立ちが覆っている
東京
思考のなかの
昇降するものをもたぬ
階段
道化師 指を剥いていく
かたちの あかい闇に
かくされた 指をいれる
ナイフ あおい犬は吠える
裂け目のうちへ もう一度でも
願う 戻ることができれば
雪のうえを歩くように
雨水を服がはじくように
ふと 思いついたことばを
書き留めるように わたしは
あの頃 あなたを愛していたが
今はあなたを愛するように
雑誌を読み たばこを吸って
素っ気なく考える
おお メタファー
わたしは 持つ線を引くだけだ
笑う おお メタファー
気がかわっているだけなのだ
Resemble
やがて
ふたたび
おなじような
くちびるのうごくゆめをみる
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