中村くん(改訂再録)/ひだかたけし
くんとよく遊んだ
彼の家にも遊びに行った
二人で訳もなくギャアギャア叫んで野原を走り廻り笑い転げた
彼は自分のスケッチブックに僕の顔をでかでかと描き
僕は日記帳に中村くんと遊んだことを書き
お互い見せ合っては
「千年(ちとせ)はやっぱ絵の天才だ」「ターシーこそ作文上手いよなあ、俺もこれくらい自分の言いたいこと言えたらなあ」
と話し合い破顔しまたギャアギャア叫んで
ある日中村くんの家に遊びに行ったら
「ターシーあそこの木に登れよ」と
彼は今まで見せたことのない陰険な笑いをして僕にそう言った
僕はその意地の悪い笑いが
自分を虐待し始める時の兄の顔そっくりで嫌な予感がしたけれ
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