winter delight/むぎのようこ
 




けして、色づく
ことのない実りを空が
見下ろしひとつ残らずあおく
透かして終うから
こころ細く磨りへらして研がれた
ひとみは
ぶあつい掌に覆われて、あめが
しずかに、雪になるように、
こまやかな
結晶があたりを循環する


ひんやりと
嘯いた頬が、じわじわと
逆上せて
うらがえったり、融けたりする
実りを
くわえた鳥が天の
たかい、たかいところを見えなく
なるまで待って
やがてしろく喪われてしまう
ひかりが
なにもかもを透明にする



うたを
くちずさんで、ふりむきざまの
影を抱いたふたえに
ひろがった虹をわかたれながら
あるいてゆくのに
幸福を千切りながら
約束ばかり磨りへらして、さよなら
すら
わすれて仕舞える花の
かおりが冷えては囲われて
ゆく冬の
ことをゆっくりと結ぶ







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