名もなき詩を書く男の最後/初代ドリンク嬢
その男は
ひたすらに詩を書き続けた
何も求めず
ただ書き続けた
詩を書くのと同じように
酒を飲み続けた
肴など必要とせず
ただ飲み続けた
血を吐いては飲み続け
罵倒されては書き続け
何のために書くのか
なぜ呑むのか
そんなこと考えもせず
血を吐いて倒れた
病院の病室でも
隠れて酒を飲み
黙って書き続けた
だが、
男の詩を読んだものは誰もいない
47歳のその最後の日
自分が植えた薔薇のつぼみを見ながら
男は書いた
「詩人たるもの
死ぬ前に食べたものを
書き残すべきだ
一膳の飯、豆腐の味噌汁、おしんこふた切れ、茶
以上を食す」
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