グッドバイ/メープルコート
夜の延長線上にある朝に聴くコルトレーン。
時間をさかのぼると見事に夜へとつながっている。
今この時までの道程に私は立ち尽くしていた。
時計だけは正確に過ぎ行く時間を刻んでいる。
もうすぐ冬の朝がやってくる。
知らない人は誰も無口で淡々と白い息を吐く。
背骨の伸びた老人は己の内面への旅支度に追われている。
自分の危機などは誰が思い描くのだろう。
背面に太陽を抱えた真っ白な雲が空を覆う。
今日は鳥の声すら聞こえない。
こんな朝は誰もが憂鬱に感じるのだろうか。
遠い存在に思いを馳せながら熱い珈琲を飲む。
孤独の音響が耳朶を打つ。
夜と朝との狭間で今も私は立ち尽くしている。
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