ひかり、を/帆場蔵人
 
を吸い込みいっぴきのさかなへと変貌していった。さかなは電車を包みこみトンネルの暗やみに燦めく尾を引いて泳ぐ。

やがて、この世界のどこかで誰かが、ひかりを、求めた。

電車がトンネルを抜ける。晴れ渡った野の景色がひろがるなか、背広姿の男が頭をかくん、とゆらしたのを機に赤ん坊が泣いた。上下する電線から雀が飛び立ち、ビニールハウスへと作業着の老人が入っていく。車内にはひかりがあり、それはとてもありふれていた。

動き続ける世界を電車が走っていく。

まるで血潮のように流れゆくすべてを観続ける、誰かの視界のなか。病葉が風に舞った。

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