生きていればこそ/メープルコート
 

 古びた洋館のベッドの上で私は眠り続けた。
 眠りの中で右腕を伸ばそうともがいていたが動かない。
 記憶の中でトイレに行きたかったのだがそれも出来ない。
 意識が朦朧としていてそれ以外は何も覚えていない。

 ベッドの上から私の目の玉をライトで照らす者がいる。
 一瞬両親の姿が、次に妻子の姿が見えた。
 私は手を必死に伸ばそうとするがそれが出来ない。
 記憶の中でトイレに行きたいと叫ぶと誰かがそのまましろという。

 意識が少しづつ戻ると洋館だと思っていたのは病院だった。
 体をベッドに括り付けられていた。
 右手には点滴が刺さっていた。
 尿道には管が刺さっていた。
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