園庭/帆場蔵人
 
ぼくの庭の死者たちがつぶやいている
《今年は雨が少ない……不作かも》
祖父かそれとも伯父か、まだ顔がある

死者たちはざわめく葉影のささやき
裸足で庭を歩けば確かに土は乾いていて
限られた水脈をどう流れたらいいのか

昔からの猫たちが足にぐるぐると
巻きついてくる、一番さきには今年の
二月にいなくなった茶虎と三毛

その毛がぼくから水分を奪っていく
反対側の猫たちは萎びていつかみた
臍の緒みたいになって境い目は失われつつある

顔が喪われた死者たちは木石のように
庭にある、それらがなんであったのか
想い出されることはないのだけれど

強い風の日には鳴動して震え
雨の日には痕跡が浮き上がる
さらさらと崩れていきもする

ぼくの庭にさよならとただいまが
腐葉土のように降り積もり

おかえり、になった

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