挽歌/
 
干上がりかけた沢の縁
山椒魚は怒るまい
ペンケのダムもパンケの家も
知らずに不幸と泣くだろか
ただ生きるのみの今世に
祖父の語つた魚に逢へずとも

  謳歌せよと、
  忘れられ、た、猫柳の、袖、さやめく、
  在りし日々、咲いて、咲いて、

気取つた八重の浜梨は
迫る針から逃れまい
白樺が松に呑まれても
サイロがくもに喰はれても
根付いた土を恨まうか
祖母の歌つた花に逢へずとも

  木漏れ日を、抱き締めよと、
  駆け抜けた鼠、せせらぎ、眠る梟、サヨナラ、
  在りし日々、裂いて、裂いて、

  仏間に放たれた、塵、金色の、
  陽炎、
  薪ス
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