地底湖/春日線香
 
。崩れかけた自転車が川の中州に引っかかっているのもいい。水子が小さな手を振るのでおそるおそる振り返したら、波紋が空と水面の青を揺らがせて、それも秋の寂しさに合っていると思った。




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遠く暗い場所を風が流れていくのが楽しかった。ふと目が覚めて、普段暮らしているアパートの一室ではなく実家にいることに気づいた。いつの間に戻ってきたのだろう。押し入れがいっぱいに開け放ってあって、下段から伸びるつるつるした坂道は海まで続いている。誰かいるようだ。登ってくる。











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