火照り/すいせい
 

同じ方向をみている
静止したまま
なにも言わずなにも吐かず
同じ方向をみている
そのまま時が止まっても
ゆきがふりつもっても
気づかないだろう静謐さで
みている
動かず
生きている
振動を満たす水盤の
溢れるに任せたまま
そのものが諦めてしまったように
同じ方向をみている
みている





ゆき
というなの
しょうじょをあいした
どこへむかう
ことのない船室で
さらさらとこぼした
髪の方角だけ気にしていた
ゆき は
はだのしろい
しょうじょで
息を止めるのが好きだった
いつか本当に止まってしまうのを
待っていたのかもしれない
[次のページ]
戻る   Point(3)