甘樫の丘から/日比津 開
 
甘樫の丘を登り、散策する
眼下には飛鳥、万葉の遺跡が点在
私は古代へと時をさかのぼり
ロマンの世界に遊ぶ

蘇我氏の隆盛と滅亡
聖徳太子の事績
大化の改新
和歌、相聞歌の舞台ー
次々と情景が浮かんでくる

この丘に邸宅を構え
板蓋宮を見下ろし
大王(天皇)を上回る
権勢を誇った蘇我氏

しかし、中大兄皇子(天智天皇)と
中臣鎌足(藤原鎌足)によって
入鹿の首がはねられ
瞬く間に蘇我氏は時代の主役から
引きずり下ろされていく

歴史のロマンの間に
血塗られた場面に出くわし
私はしばし歩みを止め
そのときの再現を試みる

いまは碑や礎石しか残っていない
しかし、そこを巡るとき
私は飛鳥の民の一人となり
宮殿を覗き、飛鳥寺に参る
そして野に出で和歌を詠む

甘樫の丘を下り、後にするまで
ほんのひとときの間
私は先数百年前に旅をしてきた

次はどこに遊ぼう?
石舞台かそれとも高松塚古墳か
天智天皇陵も近くにある
この丘から私の楽しみは
次々と広がっていく

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