落下と膨張/新染因循
 
とどかない呼び声に疲れた肉体と
やおら閉ざした瞳のうちの景色は
四十六億年もの間ずっと
はちきれないよう
力一杯に堪えつづけていた。

それでも地球は変わらずに在る。
瞳孔のかぎりをこえて膨らんだ感覚で
赫赫と燃える大地を見た。
冷たく固まる大地を見た。
そこに立つまぼろしを見た。

わたしは落下する。
あらゆるものがそうするよう
わたしという一点へ向けて。
そしてまた膝を抱えて頭蓋を仰いで、
流星が降ってくるのを待っている。

ある朝、わたしは透明になる。
まぼろしだけが残っている朝だ。
それは落下しないで、己という大きさのまま
空っぽになってしまった空を仰いで
あくびなんかをしている。


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