蝉の声/
服部 剛
背後にひとり立つ木の葉群から
夏の終わりの蝉の鳴き声…ふりしきる
路面を歩いていると
ふいに 涼しくなった
見知らぬ誰かが
水をまいた道だった
私は、気づいていたろうか
いつのまにか助けられている
誰かの手に
私は、なれるだろうか
さりげなく差し出す
誰かの手に
風に揺れて呼んでいる
緑の葉群のトンネルに、私は入ってゆく
夏の終わりにふりしきる…蝉の鳴き声に
包まれながら
この世の何処かで待つ人影が
ひとり立つ 遠い光の出口へ
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