神宮球場の夜/服部 剛
 
時は令和元年9月23日月曜日  
神宮球場ナイトゲーム

8回の表 
試合は佳境にさしかかり
引退を心に決めた阿部選手の同点ホームランで
(球場内はどっ、と湧き)
続く若手・大城選手の勝ち越しホームランで
(球場内はどどっ、と湧き)
気づくと客席の僕は
周囲の皆がくるくるくるくる回してる
オレンジ色のタオルの代わりに
スポーツ新聞の端を、つまんで 
くるくるくるりっと回してた 

後ろのG党がーるが、言った
「ヤバイ」
ってのは
――逆説の言葉の世界の醍醐味(だいごみ)だ…  
と思い
生ビールをぐいと飲む

8回の裏
サウスポーの田口投手がノーアウト満塁の
大ピンチを迎え
後ろのG党がーるが、言った
「ヤバクね?」
というのを聞いて
――語尾のアクセントが上がるのはなぜ!
ってつい思っちゃうのは
僕もおっさんになった証であろうか…

日々のグラウンドで
自分の役を
のらりくらり演じて
ふいに訪れたピンチの最中(さまか)で
余裕こいて言えるかな 

「やばくね?」 と  






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