旅/為平 澪
 
駅前の信号の青の中を
ホテルの前で屯する入り女の白い手招きを
ビジネスマンの眼鏡の先を
赤いジャンパーの男のポケットの音を
渡り歩いて辿り着く エビス屋のテーブル席

器に盛られたカルパッチョの鯛は
もう捌かれて 目はないのだけど
私がどこを潜り抜けてやってきたのか
一目瞭然で 身体を開いていた

ラテン系の音楽、弾む弦楽器、
その店から流れる音色は 筒抜けに明るく
心労が祟ってイライラしている、
タクシーの運転手のハンドル捌きさえ
リズミカルで陽気にみせる

会話は店内から外界に賑やかに溢れ
テラスの恋人たちは
カラフルなビールで乾杯して
二人の祝日に グ
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