MAR November 4 2003/カワグチタケシ
言うまでもなく、言葉は万能ではない。僕たちの言葉による意思伝達は、ほとんど奇跡と呼んでも差し支えないほどの、言葉の周囲をめぐる曖昧な了解のうえに成り立っている。もしかしたら、そんな気がしているだけで、意思伝達なんて、実はまったく成り立っていないのかもしれない。しかも、困ったことに僕は、言葉のそんな側面を偏愛している。
言葉は事物を指し示す、と思われている。人が何かを発見する。かたちあるもの、かたちなきもの。発見した何ものかに名前を付ける。そして、名前が一人歩きを始める。
一枚の絵の前に立ち、僕は途方にくれている。僕は、この一枚の平面作品を言語化して伝達しなくてはならない。
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