夜笛/la_feminite_nue(死に巫女)
 
 夜笛は声なき者の声を聞き届けるのだという。つまり、夜笛を奏する者は、声なき精霊の声を耳にすることができるのだ。夜笛は月の光によって作られているという。それは、下弦の月がわずかに傾いた時に得られる、月の光の雫の結晶だ。声なき者の声とは、宵闇に打ち沈んでいくすべての心映えだ。そこには怨嗟の想いもあり、憧れや怒りも含められている。精霊とは、一種の天の声なのだろうか。天とは人の集まりのことだろうか。夜笛には様々な想いが宿り、十色の心が散りばめられる。夜笛が現れるのは、幽玄の夜と決まっている。カキツバタの咲く野に、奇跡のようにふいに現れるのだ。夜笛を手にすることは誰にでも出来るものではない、私は夜笛を未だ
[次のページ]
戻る   Point(2)