遺書/メープルコート
 

 茂みから覗く瞳に偽りはないけれど、誰がそれを信じるだろう。
 瞳から涙がとめどなく流れてゆく。
 何もかも失った訳ではないけれど、愛するといったところの愛とは一体何なのだろう。
 信じるものが一つずつ失われてゆく。

 人生の岐路に何度立てば良いのだろう。
 夜汽車は行ってしまった。 
 希望と絶望の比率が分からない。
 灰皿に積み上げられる煙草の本数だけが私の味方だ。

 いくら泣いたところで自分の人生からは逃れられない。
 いくら願ったところで幸せは向こうからはやって来ない。
 煙草の燃えかすに自分の人生を重ねる。

 自分で命を絶つことはそれほど簡単な事ではない。
 世界中の死を私は恐れる。
 たとえこれが私の遺書になるような事になったとしても。
 
 
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