翠のはら/田中修子
 
チテ・トテ・チテ・トテ
ちいさな、
黒い足跡が。
チテ・トテ・トトトテ・トテチテトトト……

ほら、翠のはらが
どこまでもどこまでもひろがって
風に揺れている
草は目を射るように揺れている
その、ほそういさきにきらめく光さざなみ
雲のように白い子馬が駆け抜けてゆくよ……トクトクトク、心音のような足音
かろやかにあそんで、わらっている その足に踏みつけられる
野の草はいっそう ぎゅうっと絞られたレモンの、香がするの。

翠のはらは
あなたのうちがわに かならずあるのですよ。
いたみに、わすれていましたか-わすれるふりをしていたのですね
一緒に手をつなぎ闇に落ちていっ
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